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やっぱり雨は嫌いになれない

by aicocco/かんろ

雨の音を聞くとたまに昔のことを思い出す
昔といっても、そんなに前じゃなくて数年前のこと

あの時の自分はかなり心が弱っていて、外出も自力ではロクにできなかった
食べることも億劫で体重だけ減っていっていて、たぶん見た目も不健康だったと思う

そんな心が弱っている時の雨の夜はとても鬱々として、ひとりで家にいるのもいやで、なけなしの体力を振り絞ってカフェへ時間を潰しに行くこともあった

でも、困ったことに人見知りをしてしまうわたしはカフェのマスターに話しかけれる訳もなく、友達を呼べるわけもなく、ただ雨の音とカフェのBGMを聞いて小説を読むだけ

きっと、ここでカフェのマスターと話したり友達を呼べればこの鬱々とした気分も少し晴らせただろうに

ただ、そんな時でも、いや、そんな時だから、の方がきっと正しい
ひとりだけ弱っている自分をみせて頼れる人がいた
ここへ来て、なんて言えないから遠回しに『カフェで休んでいるよ』とだけ伝えて、来てくれるのか、くれないのか分からない人を待つ

少し時間がたった頃、カフェのドアが開く音がした

振り向こうかとも思ったけれど、振り向いて待っているその人でなかったらきっと落胆してしまう
だから足音がコツコツ、とこちらへきているのは分かっていたけど振り向けなかった

全然読み進めていない小説に目を落としたまま、足音が止まるまでそのままでいた

『お疲れさま』と、優しく頭をポンとさすってくれたその人は、まさしく待っていた人
やっと今日はじめて会話できる人に会えて安堵の笑みが溢れていた

雨はイヤな記憶も呼び起こすから好きじゃない
でも、甘酸っぱいような思い出もあるから、やっぱり雨は嫌いにはなれないな

そんなことを思う、雨の夜なのでした



aicocco/かんろ
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